本領域のハイライト
International Symposium on Artificial Intelligence and Brain Science 2022
Special issue on Artificial Intelligence and Brain Science
International Symposium on Artificial Intelligence and Brain Science 2020
研究計画と成果
本領域の目的
それぞれの研究の高度化のなかで乖離して行った人工知能研究と脳科学研究を結びつけ、両者の最新の知見の学び合いから新たな研究ターゲットを探り、そこから新たな学習アルゴリズムの開発や脳機構の解明を導くことである。感覚運動情報の背後にある構造を捉える表現学習、それらの変化を予測する内部モデル学習、さらに予測結果の評価による探索学習について、それぞれを確実に効率よく実現するアルゴリズムとその脳での実現を探るともに、それらをつないだ全脳アーキテクチャにならった柔軟な人工知能システムの実現をめざす。
具体的に「予測と知覚」、「運動と行動」、「認知と社会性」の各項目において、人工知能と脳科学の先端的な研究者の緊密な議論のもと、それぞれの専門分野の枠を超えた新たな問題設定とその解決に向けた共同作業を進める。また、融合分野の新たな人材育成と国際ネットワーク形成のための企画を推進する。

研究の概要
人工知能と脳科学は、収斂と発散の関係にある。パターン認識の初期の段階では、視覚野の解剖学および生理学に基づく多層ニューラルネットワークが重要な役割を果たしたが、その後の機械学習の高度な発展には、脳はほとんど関係しなかった。しかしながら、最近では、ビッグデータから学習するディープニューラルネットワークの目覚ましい成果は、人工知能に似た脳に、再びスポットライトを当てることになった。
小脳、大脳基底核、および大脳皮質の行っている学習アルゴリズムは、それぞれ、教師あり学習、強化学習、および教師なし学習のアルゴリズムに類似していることが分かる( 図1)。一方、最近の囲碁世界チャンピオンに人工知能が勝利したことで、教師なし学習、強化学習、深層ニューラルネットワークをうまく組み合わせると、人工知能が人の知性または、それ以上の知性を持てることを示した。
このプロジェクトでは、人工知能と脳科学の主要な研究者を集め、互いの分野における最新の動向を学びあうことで、これまでにない発見と発展を目指す。
図1:大脳皮質、基底核、小脳の学習アルゴリズム(Doya, 1999)
期待される研究成果と科学的意義
人工知能と脳科学の融合により短期的に以下のような成果が期待できる:
・ ディープラーニングの各層での学習の有効性の評価にもとづく、学習パラメタの自動制御ア
ルゴリズムの実用化
・ 多自由度系での高データ効率の学習によるしなやかな人型ロボット制御の実現
・ 二重分節解析により人の意図を推定するアプリケーションの開発
一方、より長期的・基礎的な研究テーマである、表現学習、予測モデル、評価と探索を組み合
わせた全脳アーキテクチャの解明は、より柔軟な「汎用人工知能」の実現に向けたデザインと、
認知のゆがみをともなう精神疾患の理解とその対処法の開発への貢献が期待できる。
さらに、人工知能と脳科学を融合するサマースクール、ハッカソンなどに若い人材を集め、新
たな融合領域を切り開く人材を輩出することをめざす。
キーワード
ディープニューラルネットワーク: 単純なものから複雑なものまで、データに隠れた統計的特徴を見つけるための多層ネットワーク。画像および音声認識に広く使用されている。
研究期間
2016年6月30日~2021年3月31日