領域代表挨拶

「人工知能と脳科学」領域の5年間とこれから

私たちの新学術領域研究「人工知能と脳科学の対照と融合」は、「それぞれの研究の高度化のなかで乖離して行った人工知能研究と脳科学研究を再び結びつけ、両者の最新の知見の学び合いから新たな研究ターゲットを探り、そこから新たな学習アルゴリズムの開発や脳機構の解明を導く」ということを目標に、2016年度にスタートし2021年3月に終了を迎えました。

計画研究11課題、公募研究前期18課題、後期20課題の連携のもと、人工知能技術や計算理論により脳機能を解明する「AIから脳」、脳科学の知見を次世代の人工知能の設計開発に活かす「脳からAI」、さらに新たな研究コミュニティを形成し人材育成を行う「AI脳融合」という3つの方向で研究活動を展開して来ました。

この約5年の取り組みの中で、新たな脳科学的発見や人工知能技術の開発が進んだだけでなく、両分野の研究者が「知能はどう生まれるのか」という共通の関心に向け頭を寄せ合い取り組んでいくネットワークが動いていること、またAIと脳科学の双方の知見や技術をもとに将来の科学技術を担う若い研究者たちの姿を見るにつけ、この領域を立ち上げて良かったと改めて感じています。

2020年10月に開催したInternational Symposium on Artificial Intelligence and Brain Scienceは両分野の先端を走る研究者を講師に迎え、オンラインながら参加登録者が1,800名以上にのぼる反響を呼び、その成果をもとにNeural Networks誌の特集号を出版することができました。

このように生まれた国際的ネットワークと若手研究者は、AIと脳科学を融合する次世代の研究を大いに発展させてくれることでしょう。それを可能にしてくれた、科研費新学術領域研究制度とその審査員やアドバイザー、学術調査官や事務局の皆様、またこの領域の研究活動やイベントに参画してくださった皆様に心より感謝いたします。

銅谷賢治(沖縄科学技術大学院大学 神経計算ユニット 教授)

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