辻本 悟史 先生

Title:脳科学の産業応用:実ビジネスの事例を用いた考察

辻本 悟史(つじもと さとし)
The Nielsen Company Singapore Pte. Ltd.

 科学に携われば、好むと好まざるとにかかわらず、その応用への関連をしばしば問われる。脳科学についても、医療、製薬、教育などさまざまな分野で応用への取り組みが展開されている。しかし、実ビジネスとして継続している例は必ずしも多くはなく、まだ課題が山積している。講演者の所属先のコンシューマー・ニューロサイエンス部門では、脳活動計測と視線・生体計測などを組み合わせて、これまでに世界40ヶ国以上で合計1万2千件以上の調査プロジェクトを遂行し、脳科学を応用したマーケットリサーチを幅広く展開している。また講演者自身は、動物モデルやヒトを対象とした基礎研究の経験も有している。本講義では、基礎研究者の視点と実ビジネスの視点の両方を考慮に入れて上記の応用事例を紹介し、脳科学の産業応用において研究者やエンジニアが直面する課題や、それらをどう捉えてどのように解決していけばよいか考察する。特に、技術シーズではなく市場ニーズにもとづくことの重要性や、基礎研究における真理の追究とビジネス場面での要求との折り合い、そして応用の進展が逆に脳科学にどう寄与しうるかなどについて議論する。

参考文献:
1. Moran Cerf, Manuel Garcia-Garcia(編集), 福島誠、大須理英子、辻本悟史(翻訳)(2019)『コンシューマーニューロサイエンス: 神経科学に基づく消費者理解とマーケティングリサーチ』 共立出版
2. Shestyuk AY, Kasinathan K, Karapoondinott V, Knight RT, Gurumoorthy R. (2019) Individual EEG measures of attention, memory, and motivation predict population level TV viewership and Twitter engagement. PLoS ONE, 14(3): e0214507
3. Ariely D, Berns GS (2010) Neuromarketing: the hope and hype of neuroimaging in business. Nat Rev Neurosci, 11(4): 284-292.

 

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