谷口 忠大 先生

Title:確率的生成モデルによるマルチモーダル教師なし学習での人工知能構築入門

谷口 忠大(たにぐち ただひろ)
立命館大学/パナソニック株式会社

 人間の認知システムは多様な感覚運動情報を統合することで、行動を学習し、概念を形成し、言語を獲得していく。このような過程はマルチモーダル情報を統合し、組織化していく動態によって表現できる。不確実性に満ちた感覚運動情報をモデル化し予測するためには。それらを目的志向な教師あり学習としてモデル化するのではなく、確率分布を陽に捉えその確率分布をモデル化し、適宜、隠れ変数を推論する教師なし学習によるモデル化、特に、マルチモーダル教師なし学習によるモデル化が重要である。このアプローチは確率的生成モデルによるアプローチ、もしくは、ベイズアプローチと呼ばれる。近年、確率的生成モデルはディープラーニングの文脈でもVAE(変分オートエンコーダ)やGAN(敵対的生成ネットワーク)などにおいて注目されている。講演者はマルチモーダルな感覚運動情報を統合し、言語獲得や行動の獲得へも繋げ人間の認知発達と言語現象をモデル化しようとする記号創発ロボティクスの研究を通じて様々な認知システムを確率的生成モデルによるマルチモーダル教師なし学習によって構成してきた。
 本チュートリアルでは、確率的生成モデルとは何かという導入から始め、グラフィカルモデルや、その推論手法について導入する。具体的な確率的生成モデルとしてはLDAやマルチモーダルLDA、そして、言語獲得のための確率的生成モデルに関しても概説したい。推論手法としてはギブスサンプリングや変分推論、さらに、VAEで用いられるAmortized推論について時間の許す範囲で導入したい。また、効率的な実装のためのライブラリやフレームワーク(PixyzやSerket)に関しても紹介したい。

参考文献:
1. C.M. ビショップ,パターン認識と機械学習 下 (ベイズ理論による統計的予測), 丸善出版 (2012)
2. 岩田具治. トピックモデル. 講談社, 2015.
3. Taniguchi T, Nagai T, Nakamura T, Iwahashi N, Ogata T, Asoh H. Symbol emergence in robotics: a survey. Advanced Robotics. 2016 Jun 17;30(11-12):706-28.
4. Taniguchi T, Ugur E, Hoffmann M, Jamone L, Nagai T, Rosman B, Matsuka T, Iwahashi N, Oztop E, Piater J, Wörgötter F. Symbol emergence in cognitive developmental systems: a survey. IEEE Transactions on Cognitive and Developmental Systems. 2018.
5. Nakamura T, Nagai T, Taniguchi T. Serket: An architecture for connecting stochastic models to realize a large-scale cognitive model. Frontiers in neurorobotics. 2018;12.
6. Pixyz: A library for developing deep generative models, https://github.com/masa-su/pixyz.

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