Title:ベイズ確率モデリング
石井 信(いしい しん)
京都大学大学院情報学研究科、ATR認知機構研究所
ベイズ確率モデリングは、ノイズや不確実性を含む未知のデータ生成過程の推定やこれにもとづく将来観測の予測を精度良く行うための一般的な方法論として近年応用範囲を拡げ続けている。とくに、計測データの裏に多数要因間の相互作用ネットワーク構造を想定できる対象(神経活動、生体分子等の相互作用モデリング)を解析するために、各要因を確率変数ノードとし要因間の依存関係をリンクとしてグラフ表現したベイジアンネットワークモデルや、さらに各ノードにダイナミクスを許容するダイナミックベイジアンネットワークモデルが提案されており、スパース性制約を事前確率の形で考慮した構造推定を可能にしてきた。
本講義では、特にニューラルネットワーク分野で開発されてきたベイズ確率モデリングの手法を概説する。動物の視覚系や聴覚系における認識過程のモデルである「予測コード」は、神経計算によるベイズ確率モデリングと位置づけられ、近年では外的世界と内的世界を同時に階層的表現する脳情報処理のモデルとしての発展を遂げている。さらに、この枠組をマルコフ確率場に対して用いることによる、ベイズ的画像超解像などの工学応用も可能である。実際に、神経画像処理に用いた応用についても紹介する。
参考文献:
1, Friston, K. (2010). The free-energy principle: a unified brain theory? Nature Reviews Neuroscience, 11(2), 127-138.
2, Lotter, W., Kreiman, G., Cox, D. (2016). Deep predictive coding networks for video prediction and unsupervised learning, arXiv:1605.08104