A03分節構造推定による自閉症モデル霊長類の家族行動解析
社会的交流とは、複数の自律エージェントが感情や意図など内部状態の交換を介して双方向に作用しながら時間発展する動的な過程です。計算機の発展を背景に、これまで必須であった単純化した仮説検証や測定条件統制の枠組みを超え、この社会的交流のダイナミクスそのものにアプローチが可能となってきました。特に自然言語分野では、最小意味単位である形態素の抽出や、自然な会話の構成論的理解など、意欲的な報告があります。しかし、そのカウンターパートであり、また非ヒト動物をも包含する普遍的な枠組みとなりうる非言語コミュニケーション過程の構造理解は進んでいません。
そこで本研究では、以下2点について研究を進めます。
1. 自由運動中の身体動作の計測系開発
深度カメラを用いた空間走査を利用し、骨格モデルの力学推定に基づくモーションキャプチャ技術を開発します。身体部位の軌道と相対角から姿勢の詳細な時系列を得ることを目指します。
2. 行動時系列の分節構造解析
教師なし形態素解析を応用し、行動時系列から意味のある分節単位とその推移を抽出します。これを用い、エージェント間相互作用のダイナミクスを記述することを目指します。
検証系として、この計測・解析法を局所的な神経回路操作を行った霊長類モデル動物と正常動物間の社会性行動に実装します。障害が動物間の社会的相互作用に及ぼす影響の構造理解を進める事で、自閉症に代表される社会性機能障害の疾患理解と支援に役立てることを目指します。