A01知覚と予測 コンフリクトコストに対する調和・不調和情報シーケンス効果の神経基盤の研究
複雑な環境で生きる高等動物は、環境に応じて異なる規則を適用することで、柔軟に最適な行為を行います。しかし高等動物の行動規則のレパートリーは多く、環境刺激が必ずしも適用すべき規則を一意に特定するとは限りません。試行錯誤で規則を適用する場合もあるし、複数の規則が同じ行為を示す場合もあります。そこで、行為の結果を得たときに行うべき強化学習は、規則適用の状況に応じて制御しなければなりません。私達は、色一致と形一致のふたつの刺激選択規則がときどき切り替わる規則交代課題をマカク属サルに訓練し、前頭前野のいくつかの異なる領野を破壊して、課題遂行への影響を調べてきました。その結果、間違いの次の試行においてサルはふたつの規則のどちらかを試行錯誤で選んで行為を決めること、この試行錯誤モード下での１回の成功からの急速な学習が前頭眼窩野の破壊でほぼ消失することを見出しました。試行錯誤モードでは、その試行で適用した規則を覚えておいて、結果に応じてその規則の価値を急激に変えなければなりません。私達は前頭眼窩野が行為選択を行う内的な状態を表現・維持し、結果による学習を制御しているとの仮説を持ちました。今回の研究では、規則交代課題にふたつの規則のうちひとつが行為選択に役立たない中立条件の試行を混ぜることにより解析の精度を上ります。そして、実験対象をヒトに移し、行動観察と磁気共鳴画像法による脳機能画像測定を用いて、前頭眼窩野が内的認知状態を表現する可能性を追求します。
